※本記事の一部はAIを活用して作成しています。
はじめに
東野圭吾さんの『架空犯』は、東京都議会議員とその妻が死亡した火災事件から始まるミステリーです。
主人公は『白鳥とコウモリ』にも登場した刑事・五代努。捜査を進めるうちに警察官の山尾が浮上し、「やっぱりこの人が怪しい」と思わせながら、さらにその先に本当の真相が隠されています。
私も読みながら山尾を疑っていましたが、真相を知って驚いたのは、山尾自身が殺人犯だったわけではないこと。
では藤堂夫妻を殺したのは誰だったのでしょうか。そしてタイトルの「架空犯」とは誰を指しているのか。
この記事では『架空犯』の犯人、藤堂夫妻死亡事件の真相、今西美咲と江利子の関係、山尾が隠していた秘密、結末までネタバレありで解説します。
※ここから先は『架空犯』の重大なネタバレを含みます。
『架空犯』のあらすじ
物語の始まりは、東京・杉並区で発生した住宅火災です。
焼け跡から発見されたのは、東京都議会議員の藤堂康幸と、その妻で元女優の藤堂江利子。
当初は火災による死亡と思われましたが、捜査によって単なる火事ではないことが判明します。
康幸は頭部を殴られ、江利子は首を絞められていたのです。
事件を担当することになったのが、警視庁捜査一課の刑事・五代努。
さらに捜査には生活安全課の警部補・山尾も加わります。
山尾は藤堂康幸の高校時代の教え子で、藤堂夫妻とは過去から深いつながりを持っていました。
捜査を進めるほど、山尾の不可解な行動が目立ち始めます。
五代は次第に、
「山尾は何かを隠しているのではないか?」
と疑うようになります。
『架空犯』の犯人は誰?
結論からいうと、藤堂江利子を殺害した犯人は今西美咲です。
ただし、ここが『架空犯』のややこしいところ。
藤堂夫妻は同じ家から遺体で発見されますが、
美咲が殺したのは江利子だけです。
藤堂康幸を殺した人物は存在しません。
康幸は江利子の死後、自ら命を絶っています。
つまり、
- 藤堂江利子 → 今西美咲に殺害された
- 藤堂康幸 → 自殺
- 火災 → 康幸による偽装
というのが事件の大きな真相です。
では、なぜ美咲は江利子を殺したのでしょうか。
今西美咲は藤堂江利子の実の娘だった
事件を理解するうえで最大のポイントとなるのが、今西美咲と藤堂江利子の関係です。
実は美咲は、江利子が高校卒業後に産んだ娘でした。
しかし江利子は自分で美咲を育てませんでした。
美咲は特別養子縁組によって今西家の子供となりますが、その後、養父母との生活もうまくいかず、児童養護施設**「春の実学園」**で育ちます。
一方の江利子はその後、女優として活躍。
さらに高校時代から関係のあった藤堂康幸と再会し、結婚します。
藤堂夫妻には香織という娘も生まれました。
江利子は、自分が産んだ美咲の存在を忘れていたわけではありません。
自身も幼い頃に飛行機事故で両親を亡くし、親戚に引き取られた過去を持つ江利子は、美咲が暮らしていた春の実学園への支援を続けていました。
しかし、江利子と美咲の関係はやがて悲劇へと向かいます。
今西美咲はなぜ江利子を殺した?
美咲には中学生の娘がいました。
ところが娘は素行が悪くなり、ついには大麻の売買にまで関わるようになります。
子育てに悩んでいた美咲は、実母である江利子に相談しました。
しかし美咲には、江利子の言葉が、
「あなたの育て方にも問題があるのではないか」
と責められているように聞こえます。
美咲からすれば納得できません。
自分を産んだのに育てなかった江利子から、子育てについて批判される。
しかも江利子には、藤堂との間に生まれた香織がいました。
そして美咲は、江利子が友人との電話で香織の出生前診断について話し、障害がないことを喜んでいるような会話を耳にします。
自分は産んだだけで手放された。
一方、香織は母親に大切に育てられている。
美咲の中で、自分と香織の人生が強烈に比較されてしまいます。
長年積み重なっていた感情が爆発し、美咲は江利子を殺害してしまったのです。
藤堂康幸はなぜ自殺した?
江利子が殺されたあと、藤堂康幸は驚くべき選択をします。
美咲の罪を隠し、自らも死ぬことを選びます。
なぜそこまでしたのか。
藤堂は美咲を、江利子と自分との間に生まれた娘だと思っていたからです。
そのため康幸にとって、
妻を殺した美咲もまた、自分の娘。
美咲を殺人犯として警察に突き出すのではなく、その罪を隠そうとします。
そして事件現場に細工をし、火を放ち、自分自身も死亡。
美咲が江利子を殺したという事実を消そうとしたのです。
ここだけでもかなり複雑なのですが、『架空犯』にはさらにもう一人、この事件を複雑にした人物がいます。
それが山尾です。
怪しかった山尾は犯人ではなかった
五代とともに捜査する山尾。
読み進めていると、この人物がかなり怪しく見えてきます。
山尾は藤堂夫妻と古くから面識がありました。
さらに事件に関係する3000万円を巡る金の動きから山尾へと捜査がつながり、一度は逮捕されます。
ところが、どうにもおかしい。
山尾の供述には、警察がすでに把握している情報ばかりが並びます。
決定的な証拠品も出てこない。
動機も曖昧。
そのため捜査側も、「本当に山尾が犯人なのか?」という疑問を捨てきれません。
実際、山尾は藤堂夫妻を殺していませんでした。
山尾がやっていたのは、もっと別のことだったのです。
山尾・藤堂・江利子の高校時代に何があった?
真相を理解するには、三人の高校時代まで遡る必要があります。
藤堂康幸は当時、教師でした。
江利子は藤堂の教え子。
そして二人は、教師と生徒という立場でありながら密かに交際していました。
山尾は江利子の同級生です。
高校時代、山尾は家業の酒屋を手伝っており、ラブホテルへ酒を届けた際に、藤堂と江利子が一緒にいるところを目撃します。
二人の秘密を知ってしまった山尾。
江利子は卒業時、山尾に口止めを求めます。
そしてその代わりに、
「一日だけ恋人になる」
という形で山尾と関係を持ちました。
この出来事が、何十年も後の事件にまで影響することになります。
永間和彦はなぜ藤堂を刺した?
高校時代、江利子には表向き交際していた永間和彦という同級生もいました。
しかし江利子が本当に思いを寄せていたのは藤堂です。
山尾と永間は親友で、二人とも山岳部。
その顧問が藤堂でした。
高校卒業後、永間は大学受験に失敗。
さらに江利子への思いも断ち切れずにいました。
そんな永間に、山尾は、
江利子と藤堂が関係を持っていた
という事実を話してしまいます。
それを知った永間は藤堂をナイフで刺し、その後、自ら命を絶ちました。
この出来事も山尾に大きな罪悪感を残すことになります。
美咲の父親は誰?
ここで大きな疑問が出てきます。
江利子は高校卒業後、美咲を妊娠しました。
では、美咲の父親は誰なのでしょうか。
藤堂なのか。
それとも山尾なのか。
江利子が山尾と関係を持った時期を考えると、山尾が父親である可能性が浮上します。
しかし藤堂は、美咲を自分と江利子との間にできた娘だと思っていました。
なぜなら、江利子と藤堂は高校卒業後の4月から関係を復活させており、山尾が美咲について「早産だった」と藤堂に嘘をついていたからです。
そのため藤堂は、美咲が自分の娘であることを疑わなかった。
そして江利子にも真相を問いただしませんでした。
作中では親子鑑定によって父親を確定させるような展開ではないため、「美咲の実父は山尾」と完全に断定するより、山尾である可能性が強く示されていると捉えるのがよさそうです。
江利子はなぜ美咲を産んだのか?
個人的に読んだときに引っかかったのが、ここでした。
江利子は妊娠した時点で、美咲の父親が誰なのか分かっていたのではないか。
それなのに、なぜ産むことを選んだのでしょうか。
江利子自身、幼い頃に飛行機事故で両親を失っています。
そのため「子供を産む」という選択と、自分では育てられないという現実との間に、江利子なりの葛藤があったのかもしれません。
ただし、ここについて作中で明確な答えが提示されているわけではありません。
だからこそ、江利子という人物を考えるうえで最後まで引っかかる部分でもあります。
山尾は何をしようとしていた?
そして事件の核心です。
藤堂康幸は、美咲を守るために事件の真相を隠そうとしました。
しかし、それだけでは完全ではありません。
そこで山尾は、さらに事件を複雑にします。
実際には存在しない犯人を作り上げるのです。
3000万円の要求。
金を受け取る人物。
藤堂夫妻を狙った何者かが存在するかのような痕跡。
こうした材料を積み重ね、
「藤堂夫妻を殺した第三者がいる」
という筋書きを作ろうとします。
つまり山尾は、殺人そのものの犯人ではありません。
美咲という本当の犯人を守るため、「架空の犯人」を作った人物だったのです。
なぜ山尾はそこまで美咲を守った?
山尾の行動には、高校時代から続く長い因縁があります。
江利子との一夜。
その後に生まれた美咲。
そして山尾自身も、
「美咲は自分の娘なのではないか」
と考えるようになります。
さらに山尾には、永間の死に対する罪悪感もありました。
自分が藤堂と江利子の関係を永間に教えた。
その結果、永間は藤堂を刺し、自殺してしまった。
藤堂、江利子、永間、山尾。
高校時代に始まった秘密が、何十年経っても彼らの人生を縛り続けていたのです。
3000万円は何だった?
捜査では3000万円も重要な鍵になります。
金を要求され、実際に3000万円が振り込まれます。
そしてその金を引き出す役割を担った人物をたどることで、捜査は山尾へ近づいていきます。
その結果、山尾は逮捕。
一見すると事件は解決したように見えます。
しかし五代は納得できません。
山尾の供述は、警察が把握している事実をなぞっているだけ。
決定的な証拠もない。
そして何より、犯行動機が弱い。
五代はその違和感を追い続けます。
『架空犯』というタイトルの意味
タイトルの意味は、事件の真相そのものにつながっています。
「架空犯」とは、実際には存在しない犯人です。
江利子を殺したのは今西美咲。
康幸は自ら命を絶った。
ところが、そのまま真実が明らかになれば美咲は殺人犯になります。
そこで美咲を守るため、
「藤堂夫妻を殺した別の犯人が存在する」
という虚構が作られます。
殺人事件なのに、本当の犯人を追うのではなく、存在しない犯人を存在するように見せかける。
これが『架空犯』というタイトルにつながっています。
『架空犯』の結末はどうなる?
五代は山尾の供述をそのまま信じません。
捜査を続け、藤堂夫妻の過去や江利子の出産、美咲との関係、高校時代の出来事を一つずつたどっていきます。
そして最終的に浮かび上がるのが、
江利子を殺したのは今西美咲だった
という真相です。
康幸は美咲を守ろうとした。
山尾もまた美咲を守ろうとした。
二人は、それぞれの方法で一人の女性の罪を隠そうとします。
特に山尾は、自分自身まで捜査対象となりながら、存在しない犯人を作り上げて真実から警察を遠ざけようとしました。
しかし五代は、目の前に用意された「犯人」に納得せず、その奥に隠された真実へたどり着きます。
『白鳥とコウモリ』とのつながりは?
『架空犯』は、『白鳥とコウモリ』と世界を共有する作品です。
幻冬舎も公式に、
「『白鳥とコウモリ』の世界再び――シリーズ最新作」
として『架空犯』を紹介しています。(gentosha.co.jp)
両作品で中心となるのが、刑事の五代努です。
ただし、『白鳥とコウモリ』の倉木和真と白石美令の物語がそのまま続く「後編」というわけではありません。
新たな事件を五代が追う、同一シリーズの別事件と考えると分かりやすいでしょう。
2026年9月4日には『白鳥とコウモリ』の実写映画も公開されます。映画をきっかけに原作を読んだ人が「続編はあるの?」と思った場合、その次の一冊になるのが『架空犯』です。(movies.shochiku.co.jp)
『架空犯』犯人と事件の真相まとめ
最後に整理します。
| 疑問 | 真相 |
|---|---|
| 藤堂江利子を殺した犯人 | 今西美咲 |
| 藤堂康幸を殺した犯人 | いない(自殺) |
| 美咲と江利子の関係 | 実の親子 |
| 美咲の父親 | 山尾の可能性が強く示唆される |
| 康幸が美咲を守った理由 | 美咲を自分の娘だと思っていた |
| 山尾は殺人犯? | 殺人犯ではない |
| 山尾がしたこと | 真相を隠すための工作 |
| 架空犯とは? | 美咲の罪を隠すために作られた「存在しない犯人」 |
『架空犯』は「誰が殺したのか」が分かっただけでは、事件の全貌が見えてこない作品です。
誰が犯人なのかではなく、なぜ周囲の人間たちがそこまでして犯人を守ろうとしたのか。
そこまでたどり着いて初めて、タイトルの『架空犯』が意味を持ってきます。
おわりに
『架空犯』で印象的なのは、五代努の目線で少しずつ真相が崩れていくところです。
山尾は最初から怪しい。
実際に逮捕までされる。
「やっぱり山尾が犯人だったのか」と思わせながら、供述や証拠にはどこか違和感が残り、その先に今西美咲という本当の犯人が隠されていました。
そして美咲を守るために命まで捨てた康幸と、自分まで疑われながら「存在しない犯人」を作ろうとした山尾。
事件だけを見れば美咲が加害者で江利子が被害者です。
しかし二人の親子関係や、江利子・藤堂・山尾たちの高校時代まで遡ると、単純に加害者と被害者だけでは割り切れない事情が見えてきます。
『白鳥とコウモリ』と同じく、事件が解決したあとにも「人を裁くとはどういうことなのか」を考えさせられる作品でした。
ここまで読んでいただきありがとうごさいました。
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