『どうしても生きてる』ネタバレ|全6編の結末と「流転」「籤」の意味

本
このブログはアフィリエイト広告を使用、Amazonアソシエイトに参加しています。

※本記事の一部はAIを活用して作成しています。

はじめに

朝井リョウさんの『どうしても生きてる』は、「健やかな論理」「流転」「七分二十四秒めへ」「風が吹いたとて」「そんなの痛いに決まってる」「籤」の全6編を収録した短編集です。

読んでまず思ったのは、まさにタイトル通り「どうしても生きてる」ということ。

夢を諦めても、仕事がつらくても、思い通りの人生ではなくても、それでも明日はやってくる。どうあっても、どんな人生でも生きていく人たちの話でした。

この記事では、『どうしても生きてる』全6編のあらすじと結末をネタバレありでまとめながら、特に印象に残った「流転」「籤」のタイトルの意味についても考察します。

※ここから重大なネタバレを含みます。

どうしても生きてる (幻冬舎文庫) アマゾン公式サイト

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

どうしても生きてる (幻冬舎文庫) [ 朝井リョウ ]
価格:781円(税込、送料無料) (2023/12/15時点)


「健やかな論理」ネタバレ|死にたい理由なんて説明できない

主人公の佑季子は、世間でよく語られる「正しい理由」に違和感を持っています。

事件が起これば「あんな家庭環境だったから」「こんな漫画を読んでいたから」、誰かが他人を攻撃すれば「自分が満たされていないから」。

世の中は、何かが起きると原因を見つけて安心しようとします。

でも、人間の心はそんなに簡単ではありません。

佑季子は、自殺した人のSNSをさかのぼり、亡くなる直前まで普通の日常を送っていたことを知ります。

「死にたい」と思う決定的な理由がなくても、人はふと死んでしまうことがある。

後半は、佑季子自身がその感覚に近づいていくので、読んでいて「このまま自殺してしまうのでは」とハラハラしました。

私には佑季子の思考がかなりわかる一方で、外から見れば「十分満たされているじゃん」とも思います。

でも、その「満たされているのだから大丈夫」という考え方こそ、作中でいう健やかな論理なのかもしれません。

最後、マッチングアプリで出会った男性から連絡が来ると、佑季子は急に会いたくなります。

大きな希望を見つけたわけではない。ただ誰かに会いたいという小さな感情によって、今日を生きる。

この終わり方がよかったです。

「流転」ネタバレ|夢を諦め、流されて生きていく

大学時代に出会った豊川と瀬古は、2人で漫画家を目指します。

豊川がストーリーを作り、瀬古が絵を担当。念願のデビューを果たしますが、次第にネームが通らなくなります。

デビュー前に大事にしていたのは、「リアル」「熱」「切実さ」「本音」「嘘のなさ」。

ところがプロになれば、それだけでは通用しません。

そんなとき2人は、ロックバンドとラッパーのライブを見て大きな衝撃を受けます。

瀬古は「これからも絵を描き続ける」と決意しますが、豊川は同じようには言えませんでした。

やがて恋人の妊娠をきっかけに漫画を辞め、保険会社の営業職へ。

しかし恋人は流産。

豊川が本当は妊娠を理由に漫画から逃げただけだったことも、妻にはわかっていました。

夫婦は離婚こそしないものの、家庭内別居のような状態になります。

「流転」の結末|もう一度挑戦しようとしても流される

保険会社で豊川は、かつての瀬古を思わせるような熱い男・明石と出会います。

明石は会社のやり方に疑問を持ち、外国人向けの保険事業で独立しようとしていました。

豊川も誘われ、もう一度「嘘のない人生」を試したくなります。

ところが明石が退職届を出した直後、豊川は会社の幹部から呼び出されます。

会社側も同じ外国人向け保険事業を始めること。

豊川をその部署の課長にする予定であること。

そして、明石が独立後に頼ろうとしていた顧客まで、すでに会社側が押さえていることを知らされます。

豊川は会社を辞めません。

昔見たバンドとラッパーのライブを再び見ながら、自分には「後ろめたさの残る人生」しかないのだと悟り、明石に謝りに行くことを決めます。

「流転」の意味を考察

「流転」とは、物事が絶えず移り変わっていくこと。

豊川は何度も、自分の信念に従って生きる側へ行こうとします。

漫画家になる。

明石と独立する。

そのたびに、現実や責任、生活に流されて別の道を選びます。

でも私は、そんな豊川が駄目だとは思いませんでした。

自分に嘘をつかず、信念を貫いて成功できる人は確かにいる。

一方で、流されて、諦めて、自分を少し殺しながら生きていくのも人生だと思います。

むしろ、その方が多くの人にとっては現実なのかもしれません。

「七分二十四秒めへ」ネタバレ|何の役にも立たない動画だけが救い

主人公は派遣社員として働く女性です。

周囲の女性派遣社員たちが次々と契約を切られる姿を見てきました。

そして、ついに自分の番が来ます。

後任が来るまで迷惑をかけないようにと必死に仕事をこなした結果、

「この業務ならひとりでもできる」

と判断され、自分の契約まで切られてしまいます。

頑張ったことで、自分の仕事をなくしてしまう。

かなりリアルでつらい話でした。

彼女が唯一息をつけるのは、バカなことをして炎上している男性YouTuberグループの動画を見る時間。

人生に役立つわけでもない。

知識が増えるわけでもない。

でも、何のためにもならない情報に溺れている時間だけは息ができる。

動画は七分二十三秒で終わります。

その次の「七分二十四秒め」から、また現実が始まってしまう。

タイトルまで含めて苦しい話です。

「風が吹いたとて」ネタバレ|正しく生きるのも苦しい

語り手は妻の由布子。

夫は、小さな不正やルール違反も許すことができない真面目な人です。

会社で不正に加担させられたことで、次第に追い詰められていきます。

夫は「風が吹けば桶屋が儲かる」の逆もあると考えます。

小さな違反が巡り巡って、大きな誰かの不幸につながるかもしれない。

理屈は正しい。

でも由布子からすれば、目の前には子どもの進学、親の介護など、現実に片づけなければならないことが山ほどあります。

社会の正しさだけを考えて生きてはいけません。

どれだけ強い風が吹いても、明日は来る。

そして、その明日を生きなければならない。

真面目すぎることもまた、生きづらさにつながるのだと思いました。

「そんなの痛いに決まってる」ネタバレ|「痛い」と言えない男

主人公・良大の会社は経営がうまくいっていません。

大学時代から付き合い結婚した美嘉は、同じ業界の別会社で順調にキャリアを積んでいます。

収入でも負けている。

中国語まで身につけ、将来を見据えて動いている。

そんな妻への劣等感から、良大はセックスまでできなくなってしまいます。

でも、美嘉にも、会社の上司にも、同期にも、本当につらいとは言えません。

そして良大は、外見も社会的地位も自分より下だと感じられるセフレと会うことで安心します。

決して褒められた行動ではありません。

それでも、

痛いときには「痛い」と言いたい。

という気持ちはよくわかりました。

我慢していると、自分でも限界に近づいていることに気づけなくなる。

人間には、誰にとっても「誰でもない存在」になって、思ったことをそのまま言える時間が必要なのかもしれません。

「籤」ネタバレ|ハズレ籤ばかりだったみのり

「籤」は「くじ」と読みます。

主人公のみのりは、自分の人生で何度も「ハズレ籤」を引いてきたと感じています。

中学3年生になるときに母親が急死。

父親と双子の兄たちから家事を押しつけられ、部活も志望校も諦めます。

大人になってからも、休みだった日にアルバイトの代わりに劇場へ出勤すると地震が発生。

帰宅できなくなった客のため、朝まで働くことになります。

そして40歳を前に妊娠。

出生前診断で胎児に染色体異常があることがわかります。

さらに夫には不倫相手がおり、「障害のある子どもは受け入れられない」と中絶を求められます。

「籤」の意味|人生には最初から選べないものがある

「籤」というタイトルは、そのまま人生で引かされる「くじ」を表しているのだと思います。

性別。

容姿。

生まれた家庭。

家族。

病気。

子ども。

本人が努力する前から決まってしまっていることがあります。

みのりは、

世界が変わったとき、自分を変えなくていい人と、その人のために自分を変えなければならない人がいる

という現実に何度も直面してきました。

「受け入れるか、受け入れないか」を自由に選べたわけでもありません。

引いた籤を生きるしかなかった。

でも最後には、ハズレ籤ばかりだった人生だからこそ得たものもあると考えるようになります。

ハズレ籤を全部つなげてリボンにする。そうすれば包帯にもなる。

この発想がとても印象に残りました。

過去を「当たり」に変えるわけではない。

ハズレはハズレのまま。

それでも、つなぎ合わせれば、自分の傷を覆うものくらいにはできる。

『どうしても生きてる』という作品を象徴するような結末だと思います。

タイトル『どうしても生きてる』の意味

読み終わって思ったのは、

まさに「どうしても生きてる」だな

ということでした。

この本の登場人物たちは、人生を前向きに楽しんでいるわけではありません。

夢を諦めた人。

仕事に疲れた人。

結婚生活に苦しんでいる人。

死が頭をよぎる人。

選べなかった人生を生きている人。

それでも、みんな「生きる」と強く決意したわけでもないのに、次の日を生きています。

幻冬舎も本作を、家庭・仕事・夢・過去・現在・未来の中で鬱屈を抱えながら生き抜く人々を描いた全6編として紹介しています。

「それでも生きよう」ではなく、

「どうしても生きてる」。

この少し投げやりにも聞こえるタイトルが、6編を読み終わるとものすごくしっくりきました。

おわりに

『どうしても生きてる』には、すっきり問題が解決して幸せになる話はほとんどありません。

豊川は夢を貫けないし、派遣社員の女性は仕事を失う。みのりの過去も「実は全部意味がありました」ときれいに変わるわけではありません。

でも、人生って実際はそういうものなのかもしれません。

きれいな成功者になれなくても、後ろめたさがあっても、ハズレ籤ばかりでも、それでも人は明日を生きている。

読み終わったあと、「頑張って生きる」ではなく、ただ生きていること自体を少しだけ肯定してもらえたような気持ちになる一冊でした。

ここまで読んでいただきありがとうごさいました。

やはり朝井リョウさんの小説は刺さるのものがあります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました