『逆ソクラテス』ネタバレ考察|安斎のその後・登場人物のつながりと結末

本
このブログはアフィリエイト広告を使用、Amazonアソシエイトに参加しています。

※本記事の一部はAIを活用して作成しています。

はじめに

伊坂幸太郎さんの『逆ソクラテス』は、小学生を主人公にした5編を収録した短編集です。

子どもたちは基本的に楽しそうなのですが、描かれているのは先入観、いじめ、大人から受ける影響、友情、失敗からのやり直しなど、意外と深いテーマばかり。

そして最後まで読むと、別々に見えた物語の登場人物が思わぬところでつながります。

この記事では、『逆ソクラテス』全5編の結末をネタバレしながら、安斎のその後、登場人物のつながりやタイトルの意味について考察します。

※ここから重大なネタバレを含みます。

『逆ソクラテス』|安斎たちが教師の先入観を覆す

小学6年生の加賀のクラスに、安斎という転校生がやってきます。

安斎が気になったのは、担任の久留米先生が草壁を「できない子」と決めつけていることでした。

先生が軽く扱う児童は、周囲からも同じように扱われてしまう。

そこで安斎は、久留米先生の先入観を壊そうとします。

草壁にテストで高得点を取らせたり、周囲からの評価を変えようとしたり、最後には野球教室に来たプロ野球選手に草壁を見てもらいます。

選手から可能性を認められても、久留米先生は「お世辞だ」と否定。

何が起きても「草壁は駄目」という自分の判断を変えません。

安斎たちが戦っていたのは草壁の能力ではなく、人を最初から決めつける久留米先生の先入観でした。

草壁は本当にプロ野球選手になった

物語の冒頭では、プロ野球中継が描かれています。

その選手こそ、大人になった草壁でした。

小学生のころ、安斎は草壁に「プロになったら合図を送ってほしい」と頼んでいます。

顔を洗う仕草をしてから、目の前に指を2本。

意味は、「顔を洗って、ちゃんと自分の目で見ろ」。

大人になった草壁がテレビ中継でその合図をすることで、小学生時代の場面と冒頭がつながります。

久留米先生が「駄目な子」と決めつけていた草壁は、本当にプロ野球選手になったのです。

この結末はかなり気持ちがいいです。

安斎はその後どうなった?

検索すると「逆ソクラテス 安斎 その後」が出てきますが、安斎自身の大人になった姿は作中では明確に描かれていません。

安斎はその後、再び転校しています。

そのため草壁のように「何の仕事に就いた」「どういう大人になった」という答えはありません。

ただ、安斎が残したものははっきりしています。

それが、

「僕はそうは思わない」

という考え方です。

周囲が「あいつは駄目な奴だ」と言っていても、自分まで同じように思う必要はない。

声の大きな人や先生が言っているからといって、それが事実とは限らない。

私もこの言葉が一番印象に残りました。

安斎自身も、父親の犯罪によって周囲から先入観を持たれてきた人物です。

だからこそ「親が犯罪者なら、その子どもも駄目になる」といった決めつけにも抗えるのだと思います。

「逆ソクラテス」のタイトルの意味

ソクラテスといえば「無知の知」。

自分が知らないということを自覚している、という考え方です。

伊坂幸太郎さんも公式インタビューで、その逆として「先入観たっぷりの先生」を登場させたところから「逆ソクラテス」の発想が生まれたと語っています。

久留米先生は、自分が草壁について正しく理解していると思い込んでいます。

つまり、

自分は何でもわかっていると思っている人=逆ソクラテス

ということなのでしょう。

「スロウではない」|いじめていた少女が変わろうとする

転校生の高城かれんは、足が遅く目立たない少女のように振る舞っています。

しかし実際には運動能力が高く、以前の学校ではむしろ人をいじめる側でした。

転校先では、クラスで目立たない村田と一緒に過ごします。

なぜわざわざ足が遅いふりをするのか。

私は、過去への贖罪のようにも感じました。

昔の自分を消すことはできないけれど、今度は同じことをしない。

小学生時代と大人になった未来が交互に描かれ、子どものころの友情がその後も続いていることがわかります。

「非オプティマス」|人は見えている姿だけではわからない

「非オプティマス」では、担任の久保先生が生徒からなめられています。

しかし先生にも、学校とは別の人生がありました。

交通事故で恋人を亡くした過去があり、その事故につながった出来事には児童の父親も関係しています。

この話で印象に残ったのは、

先生もひとりの人間で、学校以外の人生がある

ということ。

そして強気に振る舞っていた騎士人の父親が、一見地味な福生の母親に仕事で世話になっていることもわかります。

人間関係はどこでつながっているかわからない。

だからこそ、相手によって態度を変えるべきではない。

これもまた「見た目や立場だけで人を判断しない」という話です。

「アンスポーツマンライク」|残り1分は永遠

小学6年生のとき、同じミニバスチームだった5人の物語です。

彼らを指導する磯憲という先生がとてもいい。

怒鳴ったり、子どもの自尊心を傷つけたりして強くするのではなく、きちんと子どもを見ています。

スポーツをすれば自動的に人間性が磨かれるわけではない。

強かったり上手かったりすれば威張る人もいる。

だから指導する大人の影響は大きいのだと思いました。

磯憲の言葉で特に印象的なのが、

バスケットボールの残り1分は「永遠」

という考え方です。

短い時間でも、まだできることはある。

この言葉が、後半では人生そのものにつながっていきます。

不審者にも「その後」がある

5人は高校生になったとき、刃物を持った男を取り押さえます。

さらに数年後、男は逆恨みから拳銃を持って彼らの前に現れます。

再び5人で危機を乗り越えますが、ここで印象的なのは、犯人をただ「悪人」として終わらせないことです。

人生をもう終わったものだと思っている男に対して、まだ先は長いという考え方が示されます。

ここではまだ、本当にやり直せるのかはわかりません。

その答えが、最後の「逆ワシントン」に出てきます。

「逆ワシントン」|真面目に生きることは無駄じゃない

主人公・謙介は、母親からジョージ・ワシントンと桜の木の逸話を聞かされて育ちます。

母親が伝えたいのは、

最後には、真面目で約束を守る人間が勝つ

ということ。

この話では、いじめについても面白い考え方が出てきます。

子どものころにいじめた相手と、将来どこで再会するかわからない。

病院の医師かもしれないし、仕事で関わる相手かもしれない。

人生はただでさえ大変なのに、わざわざいじめをして自分の人生の難易度を上げる必要はない。

なるほど、と思いました。

ラストで『アンスポーツマンライク』につながる

そして『逆ソクラテス』で一番きれいだと思ったのが最後です。

大人になった場面で、テレビにはバスケットボール選手として活躍する駿介が映っています。

そして、その試合を見て涙を流す家電量販店の店員。

この男性は、『アンスポーツマンライク』で5人を拳銃で襲った男だと読み取れる描写になっています。

ちゃんと社会復帰していた。

しかも周囲からは、真面目な人物として見られています。

駿介も本当にプロになった。

あの事件を起こした男も、その後の人生を生きている。

『アンスポーツマンライク』で残されていた「人はやり直せるのか」という問いが、最後の最後で回収されます。

ここはちょっと泣きました。

登場人物のつながりまとめ

5編は基本的には独立した物語ですが、一部の登場人物が別の短編にも登場します。

特に大きなつながりは、

「スロウではない」→「アンスポーツマンライク」
磯憲が再登場します。

そして、

「アンスポーツマンライク」→「逆ワシントン」
プロになった駿介と、かつて5人を襲った男のその後が描かれます。

ただの短編集だと思って読んでいると、最後に「あの人だったのか」と気づく。

このゆるいつながりも、伊坂幸太郎作品らしい面白さです。

『逆ソクラテス』は「先入観」をひっくり返す物語

集英社公式が『逆ソクラテス』を紹介する言葉は、

「敵は、先入観。」

です。

草壁は「できない子」。

かれんは「足の遅い子」。

福生は見た目から家庭環境まで勝手に想像される。

頼りなく見える先生にも、学校の外の人生があります。

そして犯罪を犯した人にも、その後の人生があります。

誰かがつけた評価をそのまま信じない。

一度見ただけで、その人のすべてをわかったつもりにならない。

全5編を読むと、「僕はそうは思わない」という安斎の言葉が、表題作だけではなく短編集全体を表しているように感じました。

おわりに

小学生が主人公の5編ですが、大人が読んだ方が刺さる部分も多い作品でした。

子どもは先生や親、コーチなど、大人からかなり大きな影響を受けます。

それでも、大人が言っていることが全部正しいとは限らない。

いろんな人から影響を受けながら、いいところだけ吸収して、自分の目で見て考えてほしい。

そして大人の私自身も、

「みんながそう言っているけれど、私はそうは思わない」

と言える人でいたいと思いました。

最後の『逆ワシントン』まで読むと、過去の失敗や一度貼られたレッテルだけで人生は決まらないことまで描かれていて、本当にきれいに終わった短編集でした。

ここまで読んでいただきありがとうごさいました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました