朝井リョウ『イン・ザ・メガチャーチ』あらすじと感想 ネタバレです。推し活 ファンダム経済

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はじめに

朝井リョウの長編小説『イン・ザ・メガチャーチ』のネタバレです。

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作品紹介・概要

朝井リョウの長編小説『イン・ザ・メガチャーチ』は、
「推し活」「物語」「信仰」「マーケティング」といった現代的なテーマを、
極めて冷静かつ鋭く描いた作品だ。

タイトルにある「メガチャーチ」とは、
一度の礼拝で2000人以上が集まる巨大教会のこと。
本作ではこの言葉が、単なる宗教施設ではなく、

人を惹きつけ、信じさせ、行動させる“巨大な装置”

のメタファーとして使われている。

特徴的なのは、
2つ(正確には3つ)の物語が、同じページで2〜3行ずつ同時進行していく構成。

読み手は常に、

  • どの物語を追っているのか
  • 今、誰の視点なのか
  • 何が「現実」で、何が「物語」なのか

を意識させられる。

読後の率直な感想

正解がないと分かっていながら、
「間違う前提で、脳みそを溶かして動く」人間たちが描かれていて、
正直かなりしんどい。

でも同時に、とても現代的で、
「これは他人事じゃない」と思わされる小説だった。

14章に登場する「すみちゃん」は、
“隅川絢子”と“武藤澄香”どちらとも取れる描写になっていて、
この曖昧さ自体が物語の本質だと感じた。

正直、映画化しそうな構造でもある。

メガチャーチの意味

澄香の同級生の菜々が留学で学びたいことが『チャーチマーケティング』元々は教会の信者を増やすためのマーケティング方法。メガチャーチは一度の礼拝で2千人以上が集まる規模の教会のこと。

チャーチマーケティングとは“本質的には無意味、低価値、無関係なものを、団体が発信するストーリーによる権威づけと信者の視野狭窄によって価値が高いと思い込ませて、本来の価値以上の対価を支払わせる。”こと

ネタバレあらすじ

『神がいないこの国では、人を操るには“物語”を使うのが一番いいんですよ』

主人公・久保田慶彦

離婚して娘・澄香と月1のビデオ通話。

音楽業界にいるが、過去の栄光にすがってる感じ。

それが今流行りのオーディション番組からデビューする男性アイドルグループ『Bloome゜』ブルーミーを戦略的に売り出すチームに抜擢される。

アイドルのファンダムには信者気質の人たちがいてその人たちに『物語』を与えてお金を落とさせる。熱量の高い一万人がターゲット。その人たちの気質はINFP。共感性が高く感情移入しやすい。かつ内向的の気質。

Bloome゜のひとりが垣花道哉。澄香と同じ生年月日だった。

道哉もINFPだから、ファンダム(通称“花道”)が勝手に共感して話をデカくしてお金を落としていく。熱狂的になっていく。

チームとして花道の動向を観察するなかで“ちゃみする”の存在を認識。

久保田はインタビューで道哉と話したあと、道哉に個人的に距離を詰められ、友達と勘違いしてしまう。

最終的に道哉が適応障害で活動休止したときに、心配して家に凸ってしまい、チームを外されて謹慎。道哉的には久保田はただのスタッフ。友達ではなかった。

武藤澄香

留学が当たり前の大学に進学したが、繊細で馴染めす。МBTI診断でINFP。

ネガティブなニュースにも影響をうけてしまう。常に周りの反応を気にしてしまう。視野を拡げると身動きがとれなくなる。環境破壊とか考えだすと。

バイト先のユリちゃんの家に遊びに行って、道哉を知る。

道哉を紹介する動画を見てハマる(勝手に道哉に共感)。その動画が父親のチームが戦略的に作ったものだと知らずに。

父親に留学のためと嘘をついてお金を貰って推し活に没頭していく。SNSは“ちゃみする”という名前で活動。

隅川絢子

藤見倫太郎のファン。いわゆる“推し活”を楽しんでいる。会社の先輩のいずみさんと推しが同じとわかり、ふたりで楽しんでいる。藤見倫太郎のファンダムの通称は“りんファミ”

しかし、活動休止中だった倫太郎が自殺。りんファミの一部が自殺を受け入れられず、隠蔽された報道があるという思想に流れ始める。

絢子といずみは死者の声を聞けるという怪しげな集いに行くことになり、そのまま黒幕がどうこうとか言ってる怪しい団体『ブルームマイセルフ』に取り込まれていく。第三次世界大戦が起きるからシェルターをつくる金を集める。日本が弱体化させられている。報道は全てコントロールされ、推し活文化も若者に金や気力を使わせるため。

絢子は生きる指標のようなものがなくて倫太郎を推すことに生きがいを感じでいたが、薄々現実を見なくてはいけないことに気づいていた。

団体に取り込まれたあともわざと我に返らないようにする。

ラストシーン

絢子といづみが『ブルームマイセルフ』として渋谷で街頭演説をする。信者の勧誘のため。

その後ろには花道たちがお金を出し合って広告を出したBloome゜のデビューを祝う看板。

そして、街頭演説の日は、デビューショーケースと同じだった。

花道が写真を撮りたくて、でも変な団体が演説してる…どうしようってなったとき、ちゃみするが写真とるから、どいてほしいと絢子に声をかける。絢子はちゃみするにかつての自分をみてどく。

街頭演説は、ライブ配信していた。花道はそれを知らず、Bloomeの広告前で記念写真をとる。その様子が配信されてしまっていて、会社を謹慎になった久保田がそれをちょうど見ていた。ちゃみするが澄香だと知ってしまう。

14章の「すみちゃん」は誰を指しているのか?

14章に登場する「すみちゃん」は、
はっきりとした説明も文脈も与えられないまま描かれます。

この「すみちゃん」は、
武藤澄香とも、隅川絢子とも読めるし、
どちらでもない“誰か”として読むこともできる。

意図的に名前だけが置かれ、
読み手が無意識に「自分の思い浮かべたすみちゃん」を
当てはめてしまう構造になっているように感じました。

推す側、推される側、物語を信じてしまう側。
そのどれもが「すみちゃん」になり得るからこそ、
この章では正解が示されません。

14章の違和感は、
『人はいつの間にか、誰かの物語の中の“すみちゃん”になってしまう』
という本作全体のテーマを、最も端的に表しているのではないでしょうか。

まとめ|メガチャーチ=物語の集合体

『イン・ザ・メガチャーチ』は、

  • 宗教小説ではない
  • 推し活批判でもない

「人は、物語がないと生きられない」
その事実を、容赦なく突きつける小説だ。

信じることは、
必ずしも悪ではない。

でも――
考えることを放棄した瞬間、
それは誰かに利用される。

メガチャーチは、
遠い世界の話ではない。

SNSも、推し活も、マーケティングも、
すべてが現代のメガチャーチなのだ。

おわりに

ファンダムとは、単なるファンの集まりではなく、
物語と共感によって形成される“信仰に近い共同体”を指す社会学用語である。

ここまで読んでいただきありがとうごさいました。

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