はじめに
※本記事は、フリーダ・マクファデン著『ハウスメイド』の重大なネタバレを含みます。
未読の方はご注意ください。
『ハウスメイド』作品紹介
『ハウスメイド(The Housemaid)』は、
「住み込み家政婦 × 裕福な家庭」という王道設定から始まる、心理サスペンス小説です。
一見すると、
- 問題を抱えた雇い主
- 秘密のある家
- 何かがおかしい夫婦関係
といった、ありがちなスリラーに見えます。
しかし本作の最大の特徴は、
物語の“第二部”で、すべての見え方が反転すること。
読み進めるほどに
「誰が被害者で、誰が加害者なのか」
その認識が何度も裏切られていきます。
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読後の率直な感想
後半の真相開示が圧巻でした。
正直、読むタイミングが合わず、ちまちま読み進める形になりましたが、
それでも「続きが気になる力」はかなり強かったです。
特に印象的だったのは、
- 第二部で明かされていく真相
- 最後にニーナがミリーを庇う選択
このラストには、思わず胸が詰まりました。
単なる復讐劇ではなく、
「女性が女性を救う物語」としても強く印象に残る作品です。
あらすじ(ネタバレあり)
第一部
前科持ちの若い女性・ミリー・キャロウェイは、
裕福な家庭の住み込みハウスメイド(家政婦)として働くことになります。
雇い主は、ニーナ・ウィンチェスター
ニーナの家族は夫のアンドリューと8歳の娘、セシリア
一見、理想的な家庭。
しかし、ミリーに与えられた住み込み部屋は屋根裏部屋。
しかも、外から鍵がかかる構造でした。
次第に明らかになる違和感
- ニーナはヒステリックで、理不尽な要求ばかり
- 噂では、過去に精神病院に入院していたらしい
- アンドリューは魅力的で、ニーナとは不釣り合いに見える
ミリーは次第に、
「この家はおかしい」
「ニーナは危険な人物なのでは?」
と感じるようになります。
やがてミリーとアンドリューは不倫関係に。
そしてある日とうとう、
ニーナはアンドリューによって家から追い出されます。
ここまで読むと、
「情緒不安定な妻が破滅していく話」に見えます。
しかし――
物語はここで大きく反転します。
第二部の真相
第二部で明かされる真実は、第一部の印象を完全に覆します。
ニーナの過去
ニーナはもともとシングルマザーでした。
優しく接してくれたアンドリューと結婚しますが、
彼の本性は異常な支配欲を持つマザコン男。
- 少しでも失敗すると屋根裏に閉じ込める
- 薬を飲ませて意識を混濁させる
- 娘セシリアまで薬漬けにし、無理心中に見せかける
そしてアンドリューは警察に通報し、
「精神に異常のある妻が子どもを殺そうとした」
という構図を作り上げます。
ニーナは精神病院に入れられ、
大量の薬を飲まされ、
屋根裏部屋での出来事すら「妄想」だと思い込まされていきます。
逃げ場のない支配
回復後も、再びアンドリューに陥れられ、
屋根裏に閉じ込められるニーナ。
- 警察に言っても信じてもらえない
- ママ友たちにも「頭がおかしい」と吹き込まれている
- セシリアを人質に取られている
完全に孤立した状態でした。
○○として選ばれたミリー
ニーナは庭師のエンツォの協力を得て、
アンドリューから逃げる方法を考えます。
それが、
「身代わりを用意すること」
ニーナは、
- ミリーが前科持ちであること
- 殺人で逮捕された過去があること
を知った上で、
ミリーにアンドリューを殺させる計画を立てていました。
ニーナが家を出た直後、
ミリーは案の定、屋根裏に閉じ込められます。
(ニーナは「結婚するまでは大丈夫だろう」と思っていた)
しかし――
ミリーは反撃します。
屋根裏に用意されていた催涙スプレーを使い、
逆にアンドリューを閉じ込め、
脱水症によって殺してしまうのです。
逮捕されたのは?
ニーナはエンツォに説得され、ミリーを助けに向かいます。
しかし、すでにアンドリューは死亡。
ここでニーナは決断します。
「ミリーを刑務所に戻すのはかわいそう」
「自分なら、また精神病院に戻るだけ」
警察には
「ミリーはこの1週間休みを取っていた」
と嘘の証言をします。
さらに、
- 警察の中にアンドリューの元婚約者の父親がいた
- 彼の過去の悪行が明るみに出る可能性があった
ことから、
ニーナ自身も逮捕されることはありませんでした。
ちなみにアンドリューは、
幼少期に母親から罰として乳歯を抜かれていた
という異常な過去を持っていました。
エピローグ考察|ラストは何を意味しているのか?
物語のラストで描かれるのは、事件後のミリーが新たな家政婦の面接を受ける場面です。
訪れた家の女性・リサは、夫から暴力を受けていることを示すように、腕に指の形のあざを残しています。そして、ニーナが熱烈に推薦していたといいます。
リサはミリーに、こう尋ねます。
「わたしを助けてくれる? ミリー?」
この言葉は曖昧なようでいて、実際には非常に具体的です。
それは「逃げたい」「話を聞いてほしい」という意味ではなく、
夫から解放されるための“決定的な手助け”を求める問いかけだと読み取れます。
そしてミリーは、こう答えます。
「できると思います」
ミリーは、何を助けるのかを問い返しません。
リサの置かれている状況と、その「助け」が何を意味するのかを理解したうえで、
この言葉を口にしています。
つまりこのエピローグは、
リサもまた、ミリーに夫を殺してもらうことを望んでいる
という構図を、静かに示しています。
『ハウスメイド』のラストは、事件の終結ではありません。
暴力と支配の構造が、形を変えて繰り返されていくこと、
そしてミリーがその中で「救う側」として生き続ける可能性を残して、物語は幕を閉じます。
『ハウスメイド』はこんな人におすすめ
- どんでん返しのあるサスペンスが好き
- 「信頼できない語り手」が出てくる作品が好き
- DV・ガスライティングなど、心理的支配を描いた物語に興味がある
- 読後に「もう一度最初から読み返したくなる」小説を求めている人
おわりに
『ハウスメイド』は、
- 第一部では「狂った妻」の物語
- 第二部では「支配され続けた被害者」の物語
として、同じ出来事を全く違う角度から描き直す作品です。
そして最後に残るのは、
「真実は、誰の視点で語られるかで歪められる」
という、ぞっとする感覚。
静かに、でも確実に心に残る一冊でした。
ここまで読んでいただきありがとうごさいました。
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