星を掬う 町田そのこ ネタバレ あらすじ 相関図 その意味は?

このブログはアフィリエイト広告を使用、Amazonアソシエイトに参加しています。

はじめに

今回は町田そのこさんの『星を掬う』を紹介していきます。
この作品は『52ヘルツのクジラたち』で2021年本屋大賞を受賞した
著者が2021年10月に描き下ろしで発売したものです。

この作品には公式サイト(中央公論新社特設ページ)があります。
公式サイトはこちら

辛かった哀しかった寂しかった。
痛みを理由にするのって、楽だった。
でも……。

千鶴が夫から逃げるために向かった「さざめきハイツ」には、自分を捨てた母・聖子がいた。
他の同居人は、娘に捨てられた彩子と、聖子を「母」と呼び慕う恵真。
「普通」の母娘の関係を築けなかった四人の共同生活は、思わぬ気づきと変化を迎え――。

町田そのこ 2021年本屋大賞受賞後第1作目は、すれ違う母と娘の物語。

公式サイトより

星を掬う アマゾン公式サイトから購入はこちら

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

星を掬う (単行本) [ 町田 そのこ ]
価格:1,760円(税込、送料無料) (2024/1/10時点)


登場人物

芳野千鶴(よしのちづる)

主人公。小1の夏休み母とあてのない旅をしたあと、捨てらた。
DVの元夫から逃げたい。
パン工場の夜勤。

野々原弥一(ののはらやいち)

千鶴の元夫。7つ年上。
何かでかいことをやる、と仕事をやめるが失敗。
借金をつくる。

野瀬匡緒(のせまさお)

ラジオ番組のディレクター
千鶴の小1の夏の思い出を聞いでその親子に興味を持つ。

川村(かわむら)主任

パン工場ベテラン社員、女性。
千鶴を助けたい気持ちはあるがとくに何もしない。

岡崎(おかざき)

パン工場夜勤責任者、男性。

内田聖子(うちだせいこ)

千鶴の母。
さざめきハイツの所有者であり住んでいる。
若年性認知症を発症。
52歳

芹沢恵真(せりざわえま)

さざめきハイツの住人のひとり。
ママ(聖子)と8年同居。
美容室のスタイリスト、
容姿端麗でインフルエンサー。

九十九彩子(つくもあやこ)

さざめきハイツの住人のひとり。
高齢者向け介護施設に勤務するケアマネージャー。
44歳。

結城(ゆうき)先生 

聖子の担当医であり、ボーイフレンド。

百道智道(ももちともみち)

通称ともちん
聖子が通うデイサービスいやしの杜のスタッフ

美保(みほ)
彩子の実子。
17歳で妊娠中。
高校を中退し家出している。

加納響生(かのうひびき)

美保の相手。23歳。
まだ籍は入れていない。

相関図

あらすじ

小1の夏、あてのない旅行の後、母親に捨てられた
主人公千鶴はその理由を知りたがっていた。
ラジオに思い出を投稿したことがきっかけで
母親である聖子と再会を果たすが、
聖子は若年性認知症を発症していた。

同居人たちはそれぞれ事情をかかえ
立場の違いからぶつかり傷つけあう。

そんな中、千鶴が知った
母が娘を捨てた本当の理由とはなにか…。

ネタバレ

廃棄パンの絶望

絶望の日々

千鶴は数年前に別れた元夫弥一にお金を巻き上げられる生活をして追い詰められて、
元夫を殺すことを決意した。

弥一はお金を渡さないと暴力をふるう。
高校卒業後入社した、中古者販売店で7つ年上の弥一に出会った。
控えめな女が好きだと言っていた弥一は、
結婚後
『何かでかいことをやる』と様々な事業に手を出し失敗。
借金がどうにかなるさという金額はとうに超えたため、
借金を返しながら地道に生きよう。と千鶴が諭そうとすると
『お前、おれに口答えしていいと思ってんのか』とDVが始まった。

ラジオの投稿がきっかけで

千鶴は小1の夏休み、
母親(聖子)と1ヶ月ほどあてのない旅行に行ったあと母親に捨てられた。
父親は高校生の時病死。
同居していた父方の祖母は高校卒業した夏に死亡。

小1の夏の旅行の思い出を
ラジオに投稿したところ番組の企画に準入選した。

母が私と旅に出た1ヶ月の意味が知りたい。

ラジオを聞いた聖子の同居人である恵真から
会いたいと野瀬を通して打診があり、会うことになった。

恵真は聖子を“ママ”と呼ぶが血や戸籍の繋がりはない。
高校生の時から親代り。
聖子ほ2年前に若年性認知症を発症し、
実の子の話をするようになった。
“千鶴はみんなに愛されてしあわせになっているはずだ”
しかし、目の前に現れたのは
DVで顔を腫らし夜逃げするあてもないのに強がる千鶴。

恵真は千鶴に家(さざめきハイツ)で一緒に住むように誘った。

きっと母に似た誰か

母親と再会

さざめきハイツという元社員寮に
聖子と恵真と彩子は同居している。

聖子は病気になるまで
独り暮らしのお年寄り専門の家政婦をしており、
さざめきハイツはその人たちからもらった遺産のひとつ。

千鶴と再会した聖子は
「これから千鶴さんを支えてあげてよ」
と恵真に言われ
「私が?無理よ!」と拒絶

それを聞いてショックを受けた千鶴が
「芳野の家はあんたのせいで崩壊した!あんたが捨てた娘の成れの果てだ!」
と迫ると気を失ってしまった。

再び改めて事情(DV夫から逃げてきた。匿って)を話すが、
生活くらいは面倒みてあげると投げやり。

千鶴は元夫が追いかけてくる気がして外出できない。

彩子の事情

聖子が家政婦をしていた家主が、
彩子の勤める介護施設に入所したのが縁で知り合い、友人に。
彩子がバツイチひとり暮らしと知り、
家事をやる約束でさざめきハイツへの入居を勧めた。

家事を完璧にこなす彩子に
千鶴が「どうして何でもテキパキやれるんですか?」と聞くと
「実は、頑張っている。頑張らなかったせいで何もかも失ってしまったから」
彩子は妊娠中、酷い妊娠中毒症になり、
出産後も赤子の面倒がみれなかった。
夫と義母のフォローは手厚く、からだの回復が優先と言われたので甘えた。
気付いたときには、娘は義母に懐いていて、
自分の居場所がなくなってた。
そのまま夫と子供に捨てられた。

その子供である美保が妊娠して、
お金の無心をしに、さざめきハイツを訪ねてきた。
彩子の元夫健臣(たかおみ)は2年前に再婚。
今は1歳の夢人(ゆめと)という息子がいると美保から聞かされる。

追憶のバナナサンド

千鶴と聖子の思い出

千鶴が越してきて2ヶ月。
外出できない千鶴に
聖子がちかくのケーキ屋にスイートポテトパイを買ってくるように提案。
しかし、無理がたたって千鶴は発熱。
聖子が作ったバナナサンドは2人の思い出のものだった。

恵真の事情

恵真は1歳のとき両親を交通事故てなくし、
母方の親戚に引き取られたが折り合いが悪く
高校生になるとき、聖子と知り合いさざめきハイツへ。

恵真は容姿がよかったため引き取られた先の従姉にいじめられ、
風呂に入れて貰えす、それを元に学校でいじめられるようになった。
担任に風呂に入れてもらえないと話すと、
28歳独身男性だった担任が
自宅の風呂に連れ込み全裸で全身を撫で回した。
事件は秘密裏に処理されるが
噂がひとりあるきし、
恵真は担任と援助交際していたとネットに書き込まれていた。
五千円でやれるとか。

中学卒業間近の冬、大学生3人組に無理やり車に押し込まれた。
目撃者が通報。その目撃者が結城。
従姉は『恵真といると私も危ないかもしれないから追い出して』と親に頼み
高校生にもなればひとりで生きていけるだろう、出ていってくれ
と叔母夫婦に言われる。

結城のおじいさんの家で聖子は家政婦をしていた。
それが縁でさざめきハイツへ。

その時のトラウマで恵真は男性がこわい。
美容室で男性客のシャンプーにも入れない。
触ることができない。

病状が進行

聖子は弄便や便失禁するほど、認知症の症状が進んできた。

双子の三日月

聖子の意思

聖子の意思は
『認知症により認知能力が落ちたら、
特に自分で下の世話ができなくなったら
グループホームに入所する』ということだった。

聖子の徘徊がはじまった。
夜中に「帰りたい」と出かけようとするため、2人体制で介護。

美保が同居へ

美保が響生に捨てられさざめきハイツへやってきた。

聖子とおかあちゃん

聖子とその母は一卵性母娘とよばれてたが、
それは聖子が我慢していただけだった。
幼い頃、母親の思い通りにしないと『違うよね?』と母に抓られた。
母は『わかる』が口癖だった。
ママ友と共感するために聖子に選択させる。
母が望むものを選ぶまで抓られる。
聖子が小1のとき
『おかあちゃんと私はいっしょ』と言うまで
強く太ももを抓られ2つの三日月形の傷痕ができた。
母が望む高校に行き、就職。
母が好みそうな男性と結婚。そして娘(千鶴)を出産。
母が求める大多数の『わかる』を選ぶのは楽だったから、
感覚が麻痺していた。
母が死に弔問客のひとりに
『お母さんから卒業しないといけない時期か来たのよ』といわれ
目が覚めた。生まれ落ちたばかりのように。

聖子は「千鶴に伝えたいことが
ちゃんと頭の中にあるのに、言葉が出てこない。」と千鶴にいう。
グループホームに入るという聖子に
「またわたしを捨てるんだね。
二度も捨てるなんて許さない。そんな我儘、絶対許さない」

永遠の距離感

美保を通して気づいたこと

美保はわがまま放題。
彩子を試しているようだ。

『誰かを理解できると考えるのは傲慢で、
寄り添うことはときに暴力となる。
大事なのは相手と自分の両方を守ること。』

聖子はグループホームに入りたがっているが、
千鶴と恵真はまだ一緒にいたいとねばっていた。
千鶴はまだ外出できない。
恵真と一緒でも門扉の外にすら出られない。

美保は自分の状況をすべて母親である彩子のせいにしていた。
それを見ていた千鶴は
自分もすべての不幸を聖子のせいにしていたことを認めた。
「あの人のせいにして思考を止めてきたわたしが、
わたしの不幸の原因だったんだ」
千鶴は在宅でできる仕事はないかと探し始める。

欲しかったもの

仕事のことを野瀬に相談。
野瀬はシェルターに千鶴を探しに男性がやってきたことを告げる。
弥一だ。
千鶴は仕事を諦める。
恵真と結城は相思相愛。
聖子のボーイフレンドのふりをして恵真に会いに来ていた。

夜、いつもの徘徊中、3人で他愛無い会話をして、
私はこういう時間が欲しかったのだと千鶴が実感。

しかし、聖子が失禁。
風呂場で洗われながら
「お願い、捨てて。こんな姿を晒したくないの。娘に」
と懇願する。

縮まらない母娘の距離

翌日の夜、結城がやってきて
『特別コール』があったから
聖子はグループホームに入ると宣言した。

『自分の手でやることを美徳だと思うな。
寄り添いあうのを当然だと思うな。
人にはそれぞれ人生がある。
母だろうが親だろうが、子どもだろうが、侵しちゃいけないところがあるんだ。』

聖子『私の人生は、最後まで私が支配するの。誰にも縛らせたりしない』

見上げた先にあるもの

さざめきハイツ解散?

美保がインスタに写真をあげたことが原因で
岡崎がさざめきハイツを訪ねてきた。
美保が恵真も千鶴も知らないと対応。
しかし、弥一の影に怯える千鶴に
ちょうどいいから、みな別々に暮らそうと聖子が言い出す。

あの夏休みの真実

あの夏休み、ジェットコースターみたいな毎日は楽しかったけれど、
同じくらい疲れ果ててもいた。
千鶴はもう家に帰りたくなっていた。
そして『おうちに帰ろう』と言った千鶴の頬を
聖子は抓ったのだ。

聖子は自分が自分の母のように、
自分を娘に押し付けてしまう。と思った。
だから千鶴を捨てたのだ。
それを千鶴に伝えることができた。
千鶴「わたしと母は、母娘として共に生きていけなかったのだ。
私の望む世界では母が生きず、
母が望む世界では、私が生きられなかった。
だからあなたはわたしを捨てたのね。わたしのために」

弥一との決別

岡崎と弥一が乗り込んできた。
岡崎は恵真目当て。
弥一は岡崎にお金を払っていた。
千鶴は殴られ、恵真は恐怖で動けない。
そのとき、聖子がストーブに乗せていたやかんを弥一に投げつけた。
「許さなくていい。でも、言わせて。ごめん、ごめんなさい」
と聖子が千鶴に言った。
動けない2人の背中を聖子が「いきなさい!」と叩き
2人は外に出た。
ちょうど結城が来て警察に通報。
聖子は弥一に殴られ血まみれ意識不明。
それを見た千鶴はやっと弥一に
「わたしの人生にこれ以上関わらないで!
わたしの人生はわたしのものだ!」
といい思いっきり弥一の頬を打った

事件後

聖子は病気を娘を捨てた罰だと思っていた。
千鶴に会えて嬉しかった。

弥一は警察に連れていかれ、
弥一の両親が二度と千鶴に関わらせないと約束。
岡崎は女子高生を買春したあげく脅していたことが発覚し逮捕された。
そのためさざめきハイツにみんな残っていた。
結城と恵真が付き合い始めた。

美保が出産。

聖子は不意に千鶴と過ごした日々の話をするときがある。

千鶴は野瀬のつてで
DVに苦しむ女性たちに“シェルター”の存在や
救いの手となる法律の話を伝えるラジオに経験者として出ることに。

『ねぇ、お母さん。いつか、あの夏の続きをしようよ
恵真と3人で。』

掬った“星”とはなんだったのか?

◆掬った星

星のようにうつくしい記憶や感情。

『認知症というのは、記憶や感情を自身の奥底にある海に沈める病気だ。
本人さえも、その水面は簡単に掬えなくなる。
いまの母は何をどれだけ掬い取れるかわからない。
ならばせめて、その手に掬い取れるものが
星のようにうつくしく輝きを放つものであればいい。
悲しみや苦しみ、そんなものは何もかも手放して忘れてしまってかまわない。
きらきらした星だけを広げ、
星空を眺めるように幸福に浸っていてほしい。
そして、その星々のひとつにわたしとの記憶もあったら嬉しいなと思う。』

おわりに

全ての不幸の原因が聖子ではないが、
母親に捨てられたことは確実に不幸で
それゆえ性格が歪んでしまった。
そんな母を許した千鶴はすごいと思います。
自分を捨てたことを忘れ、幸せだったときのことしか
母親が覚えていなかったら、
私は許さない。
この作者は『あやまることは暴力だ』ということをほかの作品でも伝えていました。
許さないと思っても、許さないでいる被害者の方が苦しめられるという事実があります。

捨てる側と捨てられた側の思いのぶつかり合い、
事情を知らない相手とのぶつかり合いがこの作品の魅力だと思います。

ここまで読んでいただきありがとうごさいました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました