心淋し川(うらさびしがわ) 西條奈加 ネタバレ レビュー 感想 あらすじ 直木賞

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はじめに

全体的に暗い話。題名のせいでそう感じるのかもしれないです。

差配の茂十にはなにかあると最初から思っていました。
やっと見つけた息子の敵が、
なにもわからない惚け老人になっていたらどんな気持ちだろうか。
怒りをぶつけることもできなくて…

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感想

差配とか長屋とかはっきりと意味がわからない言葉が多くて
ふわっとしたイメージで読んでいきました。
男の人の話し方が「わたし」ていうし言葉使いとかでずっと、女だと思ってたりしました。
なんとなく悲しい、さみしい、静かな話。
貧しくて、過去に事情があって流れついた。
心町(ウラマチ)。
でも生きなおすにはいい場所と。

はじめはそれぞれの章が
全然違う時期の話なんだと思ってたけど、
最終章で今のことなんだな、とわかった。
差配は大家さんみたいなもので、
長屋は集合住宅みたいな感じですかね。

過去を聞かれないなら私もそこに、行きたいです。

あらすじとネタバレ

心淋し川

十九のちほは、溜池のような心町から、
飲んだくれの父やそれに反発しない母親から
逃れて外に嫁に行きたいと思っていた。

針仕事をしていて、
仕事をまわしてくれる仕立屋に納品に行ったときに、
上絵師の元吉と出合い恋仲になる。

しかし、元吉は仕事(修行)を選び、
結婚がしたかったちほはフラれる。

今まで仕事に厳しかった仕立屋の手代(年配で不細工)に告白される。
実は見ていた、みたいな感じで。
「誰の心にも淀みはある。
事々を流しちまったほうがよほど楽なのに、
こんなふうに物寂しく溜め込んじまう。
でも、それが、人ってもんでね。」

閨仏

りきは六兵衛の四人の妾のひとり。
1番年上。
全員不美人。
若い妾が増え六兵衛に相手にされなくなっていたある日、
六兵衛の荷物の中から男根を模した張形(バイブ?)をみつけ、
悪戯心で仏の顔を彫ってみる。(閨仏)なんだか心が満たされる。
それが仏師の郷介にもみとめられて、泣く。
「口は笑っているのに、笑顔とはどこか違う。
あれはたぶん、人の生きざまを写したものなのかもしれねえな。
生きてりゃどうしたって、悲しみはついてくる。
情けない思いもいっぱいする。
駄目なてめえを、ありのまんま受けとめて黙って見守ってくれる。
そんな気になるんでさ。
おかみさんの彫ったこの仏もおんなじだ。
ただ優しくて、じっとながめていると泣けてくる。
仏にちゃんと心が宿っているからだ」
六兵衛が突然死して、
残された妾たちはどうしようとなったとき、
郷介に口説かれるが、
今まで彫った閨仏を売って女四人で暮らしていこうと決める。

はじめましょ

『四文屋』という安い飯屋をやっている与五蔵は
昔、妊娠させた女るいを捨てた過去があった。

仕入れの途中にある神社で
聞き覚えのあるうたをうたう聡明な少女ゆかに出会い、
その子がるいの、自分の娘ではないかと思う。

結局るいに再会するが、ゆかは与五蔵の子どもではなかった。
二人の子供は生まれてすぐなくなり、養子をとったのだ。
それを聞いて一度は諦めるが、
ゆかが歌っていたうたの続きの本を手にいれて、
やっぱり三人で暮らしていきたいととび出ていく。
「鳶が鷹を生むことだって、ありやすよね?」

・冬虫夏草

吉は半身不随の息子富士之助の世話をしていた。

吉はもとは『高鶴屋』という三代続いた薬種問屋の嫁で、
その息子が富士之助。
結婚したのに姑がでばってきて
旦那の世話ができないから、息子の世話をやく。
子供のころ体が弱く手がかかった富士之助。
やがて富士之助が結婚したいといった相手の女は
油問屋『山崎屋』の娘、江季。
ふたりは家のしきたりに従わない。
山崎屋のほうが大きいから何かあれば江季は親に泣きつき、吉だけがのけ者にされた。
厳しい父親に富士之助はよりつかない。
そんな中、三代目が亡くなり、
富士之助は店を継ぐが店の評判は落ちる。
その後、富士之助が飲んで侍に絡み、
暴力をふるわれ半身不随になる。
江季には実家に帰るように言う。
一生世話をするなどできないでしょう、と。
その翌年火事にあい、心町に流れ着く。
富士之助を飼い殺しにしているがそれこそが生きがいだった。

明けぬ里

ようは、ぱっとしない顔立ち、
並外れた気性の強さの持ち主。
もと遊郭の女。
夫桐八の子供を妊娠中、遊郭の一番人気だった明里と再会する。
夫に妊娠したことを言えてなかった。
なぜなら、今も二階で客をとる飲み屋で働いていたから。
桐八とも遊郭の客として出会った。
明里には高くて入れないから。
ようは気性の強さ、喧嘩っ早いところから、
正直者だと隠居に気に入られ水揚げしてもらう。
そして自由になっていいよと言われたとき
桐八を思い出して文を出し、一緒になった。

明里は上客のひとりに水揚げされるが
実はそこの主人の手代(側仕えみたいなもの?)と恋をしていた。
そしてようと同じく妊娠していて、
ように会った翌日、心中してしまう。

ようは桐八に妊娠を打ち明ける決心をする。
お店は規制が厳しくなって
しばらく客はとってなかったから、確実に桐八の子供なのだ。

灰の男

茂十はもとは、町奉行の諸色掛りだった。(内勤、物価の調査、監督、取締)

息子の修之進は内勤を嫌い、
江戸を騒がせている夜盗を捕まえようと躍起になっていた。
茂十も込みで若い衆と飲みに行った帰り、
偶然夜盗を見つけ、追い詰めるが
あと一歩のところで夜盗の一人を殺してしまう。(転んだはずみで刀が)
殺された手下をみて逆上した夜盗の頭の次郎吉は修之進を刺し殺して逃げた。
五年後、惚け老人楡爺となった次郎吉を見つける。
逃さないために差配になる。
十二年後(今)楡爺が雪だるまをきっかけに事件のことを思い出した(殺したとき雪だるまが血で赤く染まった。りきたちが雪だるまをつくって赤い襦袢をかけた)
修之進が殺した手下は次郎吉の息子だった。
父親と名乗れなかったやっと会えた息子。
次郎吉は息子の仇を討ったのだ。
茂十と楡爺は、まったく同じ身の上の、
ふたりの哀れな父親だった。
大切なひとり息子を失ったことに慟哭し、
喪失を受け止めきれず、未だに囚われたまま一歩も先へ進めない。
怒りにすげ替え、憎しみに転化してきた感情が、ひと息にあふれた。
その後すぐに楡爺はぽっくり逝ってしまった。
憎しみであっても他とは比べられぬほどの深い縁だった。

いつのまにか、ここに居ることをあたりまえにしてくれたのは、
心町の住人たちだった。
差配として世話を焼きながら、
その実、灰になったいた茂十を日常に還してくれた。

おわりに

ここまで読んでいただきありがとうごさいました。

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