夕木春央『十戒(じっかい)』 解説 あらすじ ネタバレ『方舟』との関係

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はじめに

今回は夕木春央の『十戒』について解説していきます。
ミステリー小説です。
十戒というタイトルから小難しい印象を受けますが、
読みやすかったです。
私は5時間半で読み終わりました。
そして、ミステリーの醍醐味である推理パートや
さらなるどんでん返しも楽しめるので、
ミステリー初心者にもおすすめできると思います。

読みやすいポイント

①はじめに事件が起こって、閉じ込められたと明記されている。
②事件の舞台となる島を上から見た地形の挿絵がある。
②登場人物がいっぺんに出てくる。
③視点が変わらない。(主人公の里英(りえ)目線で終始書かれています。)

注意!

『方舟』をまだ読んでいない方は
そちらから先に読むことを強くお勧めします。

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あらすじ

導入

故人が所有していた枝内島に
9人が数年ぶりに視察に降り立った。
直径300mに満たないその島で殺人事件が起こる。
しかし、犯人の定めた戒律によって、
3日後の夜明けまで、
通報することも、島を出ることも、
犯人を特定することもできない。
無事3日過ごして、
本土に帰ることができるのか…。

登場人物

大室里英(おおむろりえ)…主人公、私。
島の所有者だった大室修造(しゅうぞう)の姪。
芸大をめざす浪人生。

大室…里英の父親。修造の弟。

沢村…日陽観光開発、社員。30代後半の男性。
身長190センチに届きそうな大柄で、活動的な印象の人物。

綾川…日陽観光開発、研修社員。若い女性。

草下(くさか)…草下工務店社長。50過ぎ。
小柄で恰幅がいい男性。

野村…草下工務店、設計士。40歳くらいの女性。

藤原…羽瀬蔵(はぜくら)不動産、社員。30前半の男性。

小山内(おさない)…羽瀬蔵(はぜくら)不動産、社員。40前半の男性。

矢野口(やのぐち)…修造の友人、修造と同い年くらいの男性。

枝内島に9人がやってきた理由

島の所有者である大室修造が交通事故で死亡した。
それを知った日陽観光開発の沢村が
「枝内島全体を整備して
まるごと貸し出すリゾート開発をするのはどうか」
と大室に持ち掛けた。
そして、泊まりがけの視察旅行が決まった。
それは修造は亡くなってから
わずか3週間しかたっていなかった。

枝内島

・外周1キロないくらいの円形の孤島。
・北側に唯一の桟橋のようなものがあり、
そこに船を着けられる。
・他は高さ9メートル近い崖。
・メインのペンションは島の南西側に建っている。
・中央の作業小屋。(地下室あり)
・ひとりかふたり用のバンガローが5つ、メインの建物と合わせて、
作業小屋を円形にほぼ等間隔で囲んでいる。
・スマホの電波は入る。

島に上陸

9人は島に上陸した。
修造は生前足を悪くしていて、
島は5年くらい放置されていたはずだったが、
ペンションにはつい数か月前に
人が使用した形跡があった。
また、規制のなったことを
知らなかったと思われる
クロスボウが発見された。
そして、作業小屋から
大量の爆弾が見つかった。

ペンション

発電機によって、電気は使える。水道もでる。
応接室、キッチン、修造の部屋、洗濯室、食堂、トイレ、浴室。
寝室は1階に2つ、2階に6つある。

寝室が8つしかないため、
里英と綾川が同室に泊まった。

事件発生

翌朝(島に来てから1回目の朝)、
小山内の死体が崖下で発見された。
背中にはクロスボウの矢が刺さっていた。

同時に犯人からの指示書きのメモがみつかった。

指示の内容

犯人からの指示の内容は要約すると、
・全員今日から3日間、島の外に出てはいけない。
・島の外の人物に状況がバレてはならない。
・警察に通報してはならない。
・スマートフォンの回収。
3日間帰らないことを怪しまれないように
家族などと連絡をとるときは、全員の監視下で行う。
・複数人が30分以上一緒に過ごしてはならない。
(最低5分はひとりで過ごす。)
・カメラ等の記録を禁止。
・寝室はひとり1部屋で、
他の部屋を訪ねるときは必ずノックをする。
・犯人が誰か知ろうとしてはいけない。
以上が守られなかった場合、
作業小屋の爆弾を起動させる。

爆弾はスマホで遠隔操作でき、
島全体が爆破するほどの威力。

これで、犯人の指示に従うしかなくなりました。
この先、ネタバレになりますので、
犯人を知らずに本編を楽しみたい方はここで一旦離脱してください。
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ここからネタバレ

里英と綾川は同室で眠り、
里英はほぼ眠れなかったから、
2人はアリバイがあった。
綾川が推理らしいこと考え始める際、
大室を仲間にいれる。
なぜなら、例え大室が犯人であっても、
大事な娘がいるのに
爆弾を起動させるとは考えられなかったから。

島に来てから2回目の朝

翌日(島に来てから2回目の朝)、
作業小屋で矢野口が死体で発見され、
また指示書があった。
今度の指示は死体をブルーシートで包むことと、
足跡を消すことだった。
実行するしかなかった。

3回目の朝

3日目の朝、指示書により、
地下室に藤原の死体があることを確認する。
脚を切断されたいた。

さらに指示が続く。
犯人が自分で死体の処理をするから、
全員で『誰が外に出たかわからないように
犯人に決められた行動をしなければならない。』
というものだった。
指示通りにすれば
翌朝船を呼んでいいとのことだった。

無事に指示どおり過ごすことができた。
しかし、夜、野村がパニックを起こしてしまい、
綾川があたためていた推理を披露する。

推理パート

綾川の推理によると
犯人は藤原だった。
小山内、矢野口、藤原は
爆弾をつくった共犯者であった。
しかし、なんらかのトラブルで
小山内が死んでしまった。
最悪の場合の逃げ場所を
用意していたのは小山内だったので
藤原は成金の矢野口を殺し、
金目の物を奪い
自分も死んだと見せかけて逃亡した。
藤原の死体は地下室だっから、
はっきりと確認できていない。
切断された脚は
矢野口のものだったのだろう。

指示では船を呼んでいいのは
翌朝なのでそうする。
まだ、藤原が島に潜んでいる可能性があったから。

4回目の朝

船を呼び、5人は島を後にした。
真犯人は綾川だった。
昨晩の推理は自作自演だった。
綾川は里英と同室だった晩、
3人が自分たちだけゴムボートで脱出し、
証拠隠滅に島ごと爆発しようと
相談しているのを聞いてしまった。
だから、小山内を殺した。
里英は眠れなかったので
綾川が犯人だと知っていた。
しかし、戒律により身動きできなかった。

船が島から十分な距離をとったとき、
綾川は念のため証拠隠滅にために、
爆弾を起動させた。

里英以外の人間は藤原が爆発させたと思っている。

里英はこの事件の真相を
生涯秘密にすることになった。
人生を懸けて守る戒律のように。

『方舟』との関係

綾川=麻衣

理由
①書類上は結婚していて、観光開発会社の仕事は新しく始めた。
②夫は行方不明。
③「勝手に人を好きになって、期待して、
それでがっかりすることが多いんだよ」
というセリフから柊一を思い起させる。
④「じゃあ、さよなら」
というセリフが方舟と同じ

おわりに

真犯人がさらっと出すぎで驚きました。

そして、犯人を知ってからもう一度読むと
里英と綾川の心理戦が面白いです。
ざっくり書いたので、このネタバレ記事を読んだ方も
本を読んでくれたらいいな、と思います。
皆の監視下で、
家族に連絡を入れることがつらい人物もいたり、
面白いですよ。
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ここまで読んでいただきありがとうごさいました。

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